佐伯泉澄『真言宗の正しい信仰の仕方』(真言時事株式会社、1987年)46ページ〜47ページ
(4) 次に宗教は、正しい道理に合った教え(正法)を、説かなければなりません。先の殉死事件のように、いくら約束だからといっても、いっしょに死んでしまうというのは、先に申しましたように道理に合っているとは思えません。そんな命を粗末にする間違った約束は、守る必要がない。守らないほうが、かえって善いと思います。道理に合わない教えは、筋の通らないこじつけの部分がありますから、どこかで矛盾撞着が出てくるものでございます。冷静になって、よく考えておりましたら、その矛盾は分かってくる筈でございます。
(5) それから、宗教の指導者は、自分の言うことと、実際の行ないとが、少なくとも一致するように努力するということが、必要でございます。もう口ばっかりが達者で、いうことは立派だけれども、することはでたらめだらけ、というようなことでは、真の指導者として、仰ぐだけの値打ちがありません。