持寶庵のブログ

光明真言法にて、神佛へ感謝の御法楽、生きている方の滅罪と故人様・ペットちゃんの菩提を弔います。夢は保護猫ハウスを作ることです。町の行者です。霊感はありません。相互供養・相互禮拝。合掌

玉鏡 肆

宮坂宥勝 校註(1974)『假名法語集(第7刷)』、株式会社岩波書店、353頁〜355頁
「文」「又」「御」「尸」「骸」「億」「筐」の旧体字は見つからないため常用漢字を使用。
「𢌞」は異体字を使用。


 さて、光明眞言を率󠄁都婆にかきて墓所に安置すれば、かの靈魂極樂淨土に徃生し、成佛の時は眉間よりひかりをはなつ。去によつて光明眞言となづくと、說きたまふ。それ率󠄁都婆のかげは、朝󠄁󠄁󠄁の五つより午の時にいたるまで、無間八難の底にしづめり。日中より後は、悲想天にいたる。故に天上および八難の底の惡人まで、光明眞言のひかりにてらされて、苦患まぬがれ、徃生をとぐるなり。率󠄁都婆は大日如來の三摩󠄁耶形、光明眞言は一切の萬德、五智の如來の大祕密主なり。又光明眞言一遍󠄁となへて、亡󠄁魂に𢌞向すれば、阿彌陀如來御手をさづけて、極樂淨土に引導󠄁したまふ。四十九遍󠄁となへて𢌞向すれば、無量壽如來かの靈を荷負して、極樂に生ぜしめたまふ。又極重惡人ありて、地獄餓󠄁鬼畜生阿修羅道に堕ち、その苦しみをまぬがるゝ期なきものゝためにも、おの/\四十九遍󠄁となへて𢌞向すれば、そのくるしみをまぬがれ、淨土に徃生すと、證文儀軌に明白なり。されば醍醐の武谷の乘願房󠄁の上人と申は、法然上人の孫弟子にて淨土門の名匠なりしが、惑時二條院より、「亡󠄁魂菩提のとぶらひにはいづれの法かまさりたる」と、勅宣の下りければ、「密宗の宝筐院陀羅尼、光明眞言より勝󠄁たるは御座なし」と奏し申されしなり。徃生淨土の本文には此眞言を出せりと、惠心僧都も徃生要󠄁集の中にかきたまへり。智證大師の御釋にも、「眞言は大乘の中の王、祕が中の最祕」と云、「法華なをおよばず。いはんや餘経をや」とのべ給ふ。栂尾明惠上人には文殊直に此光明眞言を授たまふ。まことに光明眞言の功德廣大なりし事は、わきて土砂の證據にてしらるゝ。其故は心なき眞砂なりと申せども、光明眞言にて加持する事一百八遍󠄁にして、此土砂を尸陀林のうちにちらしぬれば、土砂より光明を放ちて、かの靈を救ひ、極樂淨土におくるとのべ給ふ。眼前にも證據あり。惡人死して身すくみ、木石のごとくなりしに、土砂を一粒口に入れば、その巨益により死骸やはらかになるなり。

 其外まのあたりいろ/\巨益おほし。いづれの宗門の人なりとも、さづかりて是を唱へらるべきなり。そのゆへは未來世のものゝために、此光明眞言の法要󠄁を說かんと、大日如來のべたまふなり。或は雜行などゝいひ、又はたのしみ宗門にてなしなどと、偏󠄁頗の心をおこして是を不信心のかた/゛\は、寶の山に入ながら、手をむなしうして歸るがごとし。悲ひかな、三途󠄁の舊里に立かへり、惡趣のくるしみをうけん事、まことに池邊のわらはべを見しにことならず。されば此眞言に萬德の巨益演說したまふ事かぎりなし。今淺智短才の愚案にまかせ、見聞する所󠄁あらまし書あらはすものなり。