持寶庵のブログ

光明真言法にて、神佛へ感謝の御法楽、生きている方の滅罪と故人様・ペットちゃんの菩提を弔います。夢は保護猫ハウスを作ることです。町の行者です。霊感はありません。相互供養・相互禮拝。合掌

玉鏡 壱

光明真言の功徳を知るには、『光明真言和讃』か『玉鏡』を読むのが一番良いかと存じます。
これから光明真言布教のために何回かに分けて『玉鏡』を掲載します。
振り仮名と注釈は省略しました。

宮坂宥勝 校註(1974)『假名法語集(第7刷)』、株式会社岩波書店、349頁〜351頁

◇『玉かがみ』の題簽は、以空が、この著作を紫宸殿で講じたとき後水尾法王の勅題によるもの。


玉かがみ  
                 以空

 つら/\世間の無常を歡想するに、王公を申たてまつれども、あさましき人間のわづらひをも、逃れさせ給はず。朝の玉の臺に錦の褥をかざりぬれども、夕のけぶりとなる身は芭蕉の風にあへるがごとし。死門は歩みにしたがひてちかし。綾羅錦鏽は三途のはだへをかくしがたし。蒲席の睦言は、しばしの木靈のひゞきに似り。華容紅顏の裝ひも、槿花一日の榮におなじ。又は、めなれぬ草のうへに、その名ばかりのこれり。黑髪は蓬がもとにまとへども、誰か是をはらはん。白骨は草むらによこたゆれども、これを抱く者さらになし。まことに夏の夜の夢にことならず。盛者必滅の理、口にいひて、身にしられず、たとへば駑駘の鞭になれたるたぐひなり。ひきかへて、おどろかせたまへ。

 まことにうけがたき人身をうけ、さいはひにあひがたき密教、廣大無邊の功德貴き光明眞言となへさせたまひ、現當二世の祈願なさせたまはゞ、利益なにかは虚しからん。爰に高祖大師の御釋にいはく、「冒地の得がたきにはあらず。此法にあふことのやすからざればなり」と釋したまへり。ぼうぢとは梵語智慧の義なり。總じて一さい宗門と申せし事、釋迦如來御在世の時は、そのわかちなし。御入滅二千餘囘の後、三國に八宗傳来す。其外わが朝にて興行の新宗なり。然に眞言一宗は、大日如來の所說、三世常恆の法なれぼ、法爾法然の宗門なり。さる程に、分別聖位經に眞言陀羅尼宗と、釋迦如來も說きたまふにより、諸宗にすぐれて最上至極の宗旨たり。これによって、眞言宗のすゝめには現當二世の利益ある也。大唐󠄁靑龍寺惠果和尙の御釋にも、「人の中に貴きは國王、法の中に最勝なるは密經なり」と釋したまふ。爰をもつて、善導和尙も、「餘經にもれたるを陀羅尼をもつてこれを利す」と說かせたまふ。

 此ゆへは、念佛はひとへに他力による。眞言には「以我功徳力、如來加持力、及󠄁以法界力」とて、此三力によれば、末法劫末のときにも、舎利の利益有べしとみへ侍るなり。六波羅蜜經にいはく、「或はまた、有情󠄁、もろ/\の惡業、四重八重、五無間罪をつくり、方等經をそしる。一闡提等、種々の重罪を消󠄁滅する事を得せしめ、速󠄁疾に解脫し、頓に涅槃をさとる。しかもかれがために、もろ/\の陀羅尼藏を說」と云々。まことにありがたくも、三大僧祇の修行を一念の阿字にこえ、一字の眞言あれば、大聖とても、鈍愚の者も唱やすし。智あさきとても、呪力ふかければ、利益むなしからず。觀念せざれども、三力の加持なれば、悉地成就しやすし。現生には、罪障をはらひ、當來には菩提をゑて、九品蓮臺のまへに、彌陀の聖容をはいせん事、うたがひなし。