持寶庵のブログ

光明真言法にて、神佛へ感謝の御法楽、生きている方の滅罪と故人様・ペットちゃんの菩提を弔います。夢は保護猫ハウスを作ることです。町の行者です。霊感はありません。相互供養・相互禮拝。合掌

大仏頂陀羅尼について その壱

碩学な方が大仏頂陀羅尼についてお話しされていましたので、出来るだけ調べてみました。

最初に、楞厳呪 - Wikipediaをご覧いただければ詳しく掲載されていますが、陀羅尼名が様々なため情報が分散していますので、陀羅尼の内容と信仰を備忘録も兼ねて書き残しておきます。

仏頂陀羅尼は、伝わる時期や元になった経本で名前が複数あり、内容も少し変わるようですが、ほぼ同じものです。

禅宗様では「楞厳呪」と呼ばれお唱えされる習慣が続いています。

では、高野山ではどのように扱われているのでしょうか?

真言宗における『大仏頂陀羅尼』の伝持とその内容について.大柴清圓(※1)を読んで特に気になりましたのは、

弘法大師は『五部陀羅尼宗秘論』の中で、

「若し大仏頂を持たば、舡の大海に汎ぶが如し。衆聖、威な同じく護りたまひ、神通の威力も大なり」

と記されて『大仏頂陀羅尼」の功徳を讃えていらっしゃる点と、

「大随求陀羅尼経」梵蔵漢対照研究.浅井覚超(※2)では、

弘法大師全集』第五輯、P.448
「一、聲明業一人
應暗誦梵宇真言大佛頂、及随求陀羅尼
石一業人應兼學孔雀明王径一部三卷

とお大師様が同陀羅尼の習学を定められたと注目すべき箇所がございます。

付法の第五祖金剛智三蔵、第六祖不空三蔵、第七祖恵果和尚、そして第八祖弘法大師が等しく重んじておられます ※1 が、

「明治時代以降、常用経典から省かれたため、常にはお唱えする習慣は無くなった」とご縁のある高野山真言宗僧侶の方々から伺いました。

理由は分かりかねるのですが、宗派として大きな決断があったようです。

(他の真言宗諸派についてはお尋ねしていませんので不明です)


また、天台宗様ではどのような扱いなのか天部大好きなご住職にお尋ねしてみたところ、

「儀軌にあるように重要視されている」

とのお返事でした。

 「石卒都婆、生前つくりはこばんと欲す。もしいまだ運ばざるまえに命おわらば、しばらく仮卒都婆を立て、その下を掘りあく除くこと三四尺ばかり、骨を穴底において上に土を満たすべし。四十九日のうちに石卒都婆をつくりて、立てかゆべし。これ遺弟らときどき来礼の標示なり。卒都婆中に、随求、仏頂、尊勝、光明、五字、阿弥陀など、真言を安置す。生前、書きもうけんと欲す」(『群書類従』釈家部・巻27)

[元三大師(良源上人)の御廟 | ストーンサークル

上記記事内で、元三大師御廟の石塔内に納められているとありますので、古来より霊験灼然な陀羅尼として信仰されています。


次に、他宗でも重要視され、お大師様がその功徳について言及されている陀羅尼の内容とはどういったものか、下記論文をご一読ください。

梵学津梁所収の白傘蓋陀羅尼の研究. 木村 俊彦
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ibk/62/1/62_KJ00008992057/_pdf/-char/ja

「楞厳呪」を読論する功徳.教学研究委員会編(臨済宗妙心寺派
https://www.myoshinji.or.jp/educate/bulletin/pdf/kiyou-vol.01/comitee%20for%20zen%20buddhism%20dtudies;merit%20of%20chsnting%20leng-yan%20zhou.pdf

滅罪を行いながら、あらゆる災いから受持読誦するものを護り且つ攻性防壁のような一面もある陀羅尼です。

特に、お唱えする者を魔から遠ざけるとはっきり書いてございます。

更には、鎮護国家の功徳まであります。

現在のように疫病が流行り世情不安定な世の中で力を発揮する陀羅尼と言えましょう。

面白いのは、首楞厳経内にある(観音の化身である)頻那夜迦や、諸々の悪鬼の王とその眷属(さえ)も、皆な(呪文によって得られた利益に対して)恩を深く感じて、常にその人々を守護するだろう。

という箇所です。

(首楞厳経は、密教大辞典によると真言宗では用いませんが、功徳がわかりやすく書いてありますので記しておきます)


そのような霊験あらたかな大仏頂陀羅尼の本尊は何方でしょうか?

諸説ありますが、慈雲尊者が訳された大仏頂陀羅尼の題名は仏頂白傘蓋不敗反呪詛陀羅尼』ですし、陀羅尼内で説かれているお姿からすると、白傘蓋仏頂(びゃくさんがいぶっちょう)でしょう。

こちらは胎蔵曼荼羅 釈迦院 のお釈迦様のお隣りにおはします白い傘を持った佛様になります。

白傘蓋仏頂は、密教大辞典によりますと 白浄慈悲の繖蓋(絹の傘)を以て衆生を覆護する本誓なり。 とあります。

左手に持つ白い日傘は、強い日光や熱を遮ぎって王を護る様に、こちらの尊格(大仏頂陀羅尼)は人々に安寧をもたらす功徳がございます。

特に今年の夏は日差しが強かったので、サンバリアという日傘を思い浮かべていただくと白傘蓋仏頂の働き「お陰様」のイメージが湧きやすいと思います。


長くなりましたので次に続きます。



※1 真言宗における『大仏頂陀羅尼』の伝持とその内容について.大柴清圓 
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jeb1947/2008/220/2008_220_L77/_pdf/-char/ja

※2 「大随求陀羅尼経」梵蔵漢対照研究.浅井覚超
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jeb1947/1988/162/1988_162_L104/_pdf/-char/ja